宇津の谷にある隧道群
前ページで明治「宇津谷隧道」を紹介してきたこのレポート。
このページでは大正「宇津谷隧道」と「新宇津之谷隧道」、そして「平成宇津ノ谷隧道」の3本の隧道を紹介します。
明治「宇津谷隧道」をご覧になりたい方は、 こちら からドウゾ・・・
隧道群の位置関係はこのようになっています。
このページでは、まず赤ラインの旧国道1号線(現:静岡県道208号線)にある大正「宇津谷隧道」を、
そして国道1号線上り線の「新宇津之谷隧道」(青ライン)、国道1号線下り線の「平成宇津ノ谷トンネル」(緑ライン)の順に紹介していきます。
写真は県道208号線と明治道の藤枝側分岐点です。
まっすぐ続く2車線の道が県道208号線、右へ分岐している道が明治宇津谷隧道へ続く明治道です。
大正宇津谷隧道へは、このまま県道208号線をまっすぐ進みます。
右カーブが終わると、すぐに大正宇津谷隧道が姿を表します。こちらが藤枝側坑口です。
アーチ部分が白くなっており、また完全な円ではなく、楕円形になっているところも特徴的な坑口です。
扁額です。右書きで「宇津谷隧道」と書かれています。
前ページで紹介した明治宇津谷隧道と名前がまったく一緒なのですが、問題はないのでしょうか?w
上部には、同じく右書きで「昭和五年十二月竣功」と書かれています。
実は、この隧道の建設を始めたのは大正時代だったのですが、竣功したのは昭和なのです。
しかし、昭和には「新宇津之谷隧道」(後ほど紹介します)が竣功しているため、混合を避ける意味で大正宇津谷隧道と呼ばれています。
内部です。しっかりと照明が点灯しています。現在でも旧国道1号線ということから、少ないながら交通量があります。
また、若干狭いながらもしっかりと2車線分の幅が確保されており、隧道内での離合も可能です。
昭和初期に完成した隧道としては、かなり立派な規格といえるでしょう。おかげで現在もこうして車を通しています。
静岡側坑口です。坑口自体は藤枝側と同じ形ですが、こちら側は全体的に苔むしており藤枝側に比べると状態が悪く見えます。
これは前ページで紹介した明治宇津谷隧道にも共通しています。太陽光の当たり具合の問題でしょうか?
扁額です。藤枝側と同じ物ですが、竣功が「昭和三十年」と書かれているのが分かります。
実は、隧道完成後に静岡側坑口付近が崩壊しており、再建をしたために藤枝側の坑口と竣功年月が食い違っているのです。
大正宇津谷隧道を抜けた県道208号線は、どんどん高度を下げていきます。
この先合流する国道1号線に中央分離帯があるため、途中分岐が現れます。
静岡市街方面の道はそのまま国道1号線に合流しますが、
浜松・島田方面の道はいったん国道1号線の上を跨いでから合流することになります。
その跨ぐ部分から見えるのが、この「新宇津之谷隧道」です。
新宇津之谷隧道は、先ほど紹介した大正宇津谷隧道の交通量増加に伴って昭和34年に竣功した隧道です。
現在は国道1号線上り線の隧道として活躍していますが、完成時は上下線供用でした。
坑口のアーチ部分の色が周りと異なっているあたり、大正宇津谷隧道と似ています。
新宇津之谷隧道のすぐ隣にあるのが、「平成宇津ノ谷トンネル」です。
平成宇津ノ谷トンネルは、新宇津之谷隧道の交通量増加に伴い平成3年に竣功した、宇津の谷隧道群の中で最も新しいトンネルです。
それまで上下線供用だった新宇津之谷隧道を上り線専用とし、下り線をこの平成宇津ノ谷トンネルに通すことで交通量を裁きました。
平成宇津ノ谷トンネルには歩道も設置されており、歩行者や自転車も通ることができます。
扁額・・・というかプレートです。口坑の左側下部に設置されています。
正式名称で「平成」と名前の付くトンネルはなかなか珍しいのではないでしょうか?
しかし、明治・大正の隧道は「宇津谷」、昭和の隧道は「宇津之谷」、平成のトンネルは「宇津ノ谷」・・・。統一感全くないですw
もう1つ新しいトンネルが出来たら、「宇津の谷」になるんじゃないかと期待してしまいますw
延長881mは明治宇津谷隧道の4倍もの長さになります。現在の技術はすごいものです。
内部です。平成生まれなトンネルだけあって、現代風な設備になっています。
ただ、車道と歩道の境界は少しの段差と細いパイプのみ。
真横を次々と自動車が高速で通過していく光景は、生きた心地がしませんでした・・・。
明治時代から始まり、今では4本もの隧道を通している「宇津の谷」。
新しい隧道が建設されれば、古い隧道は使用されなくなることが多い中、
明治の隧道は有形文化財に登録され観光客が
大正の隧道は地元の方や抜け道として利用する方が
昭和・平成の隧道は国道1号線と言う幹線を通し、昼夜問わず多くの方が
それぞれ有効に使用されているのです。
路線バスなら、新静岡駅から約25分、藤枝駅から約35分で来ることができます。
お手軽な隧道探索コースとして、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?