「2人きりの部屋」






今日は初めて陽子が私の家に来る。

「変じゃないかしら・・・。」

今一度部屋を見渡す。
昨日のうちに掃除はしたから変なものは無いはず。
いや、最初から変なものなんて無いけど。

「そろそろかしら・・・。」

数秒おきに時計を見てしまう。
友達を部屋に入れること自体初めてなのに、その相手がよりによって陽子だなんて。
心臓の鼓動がうるさい。

「大丈夫よ、シノも来るし2人きりってわけじゃないんだから。」

少しでも緊張を和らげようと、そう自分に言い聞かせる。
その時、インターホンが鳴った。
私は、1回深呼吸をして玄関のドアを開けた。

「来たよ、綾。」
「いらっしゃい、陽子。」

私服姿の陽子。
今までも何度か私服は見てきたけど、いつもカッコよく着こなしていてドキドキしてしまう。
陽子を家へ入れようとしたところで、シノがいないことに気づいた。

「シノは一緒じゃないの?」
「急用で来れなくなったって、綾に連絡いってない?」

そんなこと全然聞いてない。
ということは、私と陽子の2人きりってこと?
どうしよう、心の準備が・・・。

「ここが私の部屋よ。飲み物とかを持ってくるから中で待ってて。」
「そんなの別に良いのに。」
「一応お客様だもの。」
「そう? じゃあよろしく。」

陽子が部屋の中に入ったのを確認すると、私はキッチンへ向かった。
飲み物とお菓子を準備しながら心を落ち着かせようとしたけど、心臓の鼓動は収まってくれない。
あまり陽子を待たせるわけにもいかないし、できる限り平常心を保ちながら部屋へと戻った。

「おまたせ、麦茶でよかったかしら。」
「ありがとう。」

そう言うとすぐに麦茶を飲み始める陽子。

「ぷは〜、生き返る!」
「もう、陽子ったらおじさんみたいよ。」
「そういえば、綾の部屋入った時から思ってたんだけどさ・・・。」

陽子の言動にツッコみを入れ、いつもどおりに振舞えたことに安堵したのも束の間。
もしかして何か部屋におかしなところでもあったのかしら・・・。

「綾の部屋いい匂いだな。」
「な・・・ななな何言ってるのよ!」

予想もしていなかった発言に、私はパニックに陥った。

「いかにも女の子の部屋って感じだな。私の部屋なんて絶対こんな良い匂いしないよ。」

恥ずかしすぎて頭が沸騰しそう。

「陽子のバカ!」
「なんで!?」

言い返す言葉を見つけることもできず、そう叫ぶことしかできなかった。
デリカシーが無い陽子が悪いのよ。
だって匂いだなんて・・・。

「その・・・変な匂いじゃない?」
「全然。むしろ私、この匂い好きだよ。」
「そう・・・。」

やっぱり気になることだし、そう聞いてちょっとだけ安心した。
でも、好きな匂いなんて、どうしてそんな恥ずかしいこと普通に言えるのよ・・・。

「それより、今日は勉強をしに来たんでしょ。早く始めましょ。」

とにかく私は、話題をそらせたかった。
というか、そもそもこれが本来の目的のはずなんだけど。

「しょうがない、やるか・・・。」
「まずはどの教科からやるの?」
「じゃあ数学お願い!」

こんな近い距離で陽子と2人きりで勉強。
内心ドキドキが収まらないけど、どうにか陽子の質問に答えていく。

「ふぁ〜・・・。」

しばらくして、陽子の口からあくびが出た。

「もう、だらしないわよ。」
「だって眠くなってきちゃったんだもん。」
「じゃあ、ちょっと休憩しましょうか。」

勉強を始めてから1時間くらい経ってるし、少しくらいなら良いわよね。

「じゃあ綾、寝るからベッド貸して。」

ちょっと待って・・・。
私が陽子の唐突な発言を理解し、そう言おうとした時には、もう陽子は私のベッドに横になっていた。

「このベッドすごい綾の匂いがする。」

もう死んでしまいたい・・・。
よりによって私のベッドの匂いだなんて・・・。

「なんだか落ち着くなぁ、この匂い・・・。」

なんで平然とそんなことを言えるのよ。
嬉しいけど恥ずかしすぎてもう訳分かんない!
なんて悶々としていると、寝息が聞こえてきた。
まさか、もう寝ちゃったの・・・?

「まったく、私の気も知らないで・・・。」

ちょっと休憩・・・のはずなのに、しばらく陽子は起きそうにない。
私は、熱くなった顔を冷まそうと、テーブルに置いてあった麦茶のグラスを取り、自分の頬に当てた。
心地良い冷たさが伝わってくる。
気持ちを落ち着かせようとして部屋を見渡すと、ふと陽子の寝顔が目に入ってしまった。
途端に、また激しい鼓動を打ち始める私の心臓。
当分、顔の火照りは取れそうにない。




最後までお読みいただき、ありがとうございました。
4作目の「きんいろモザイク」小説でしたが、いかがでしたでしょうか?

毎回、書く度にほかのキャラクターも出さなければと思いつつ、やっぱり「陽子×綾」が好きで結局この2人になってしまうという・・・。
個人的に、この2人はすごく書きやすいというのもあります。

原作はどんどん終わりに近づいており、少し寂しい気持ちになりますが、今後も書いていきたいと思います。
アニメ3期あくしろよ。


ご意見・ご感想をお待ちしております。




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