「ルームシェア」





「大学に進学したらさ、一緒に住まない?」

陽子と同じ大学に行くことが決まり、”受験”という2文字から解放されて気が抜けていたところに、突然飛び込んできた言葉。

「私料理まったくできないから、綾がいれば安心かなって思って。」

大学までは今の家からも十分通える距離だし、てっきり通うものだと思っていたから驚いた。
いや、問題はそこではない。
一緒に住むってことは、おはようからおやすみまで暮らしをみつめることになるわけで・・・て、それじゃどこぞの洗剤メーカーみたいだ、落ち着け私。

「なんで料理できない自覚があるのに一人暮らしするつもりでいるのよ。」
「せっかくの大学生活なんだし遊びまくりたいじゃん!」

なんとも陽子らしい理由だけど、それならもう少し自分でなんとかする努力をしてほしい。

「でも一人暮らしは家賃も掛かるし、掃除や洗濯も自分でしないといけないし、なら綾とルームシェアすれば良いじゃんってなったわけ!」
「なったわけ・・・じゃないわよ! 私何も聞いてないわよ。」

要するに、陽子のお世話係ということのようだ。
なんだか利用されているようで釈然としない一方、掃除して、洗濯して、夕飯作って帰りを待つなんて、まるで夫婦のようだと色めき立っている私もいた。

「お願いだよ綾!」
「陽子がどうしてもって言うなら仕方ないわね、まったく!」

あくまで陽子のせいだ、と自分に言い聞かせるように返事をする。

「やった、ありがと綾!」

太陽のように眩しい笑顔で私の手を握ってくる陽子。
そんなことをされたら、もう何も言い返せない。

「料理は無理でも、洗濯とか掃除は頑張るからさ!」

待って。
陽子が洗濯するということは、当然私の下着とかも見られてしまうわけで。
そんなの絶対無理。

「洗濯は私がやるわ!」

そう口走ったものの、よく考えればそれもマズい。
私が洗濯するとなると、今度は私が陽子の下着を見てしまうわけで。
完全に詰みである。

「じゃあ洗濯は綾に任せちゃおうかな!」

しかし、陽子はそんなこと気する様子もなく、あっけらかんと答える。
もうすぐ大学生だというのに、気にしている私のほうがおかしいのだろうか。
確かに、そういうことを考え出したらキリが無い。
寝起きの顔やパジャマ姿だって見られてしまうし、なんならシチュエーション次第では裸姿を見られてしまう可能性すらある。
下着を見られるなんて些細なことを気にしている場合ではない。
それならせめて・・・。

「部屋は私が決めるわ!」
「別に良いけど?」

少しでもリスクを減らせる部屋を探すしかない。
ある程度目星を付けておかないといけないし、これから忙しくなりそうだ。
親にも住みやすそうな街とか訊いてみようかしら。
・・・あれ?

そもそも、親にルームシェアのことをまったく話していないことに気づく。
こんな大事なこと、私と陽子の2人だけで決めて良いわけがない。
とりあえず、親には帰宅したらすぐに相談するとして、念のため陽子にも確認してみる。

「このこと、親にはちゃんと相談してるのよね?」
「まだだけど?」
「私よりそっちが先でしょ!」



最後までお読みいただき、ありがとうございました。
5作目の「きんいろモザイク」小説でしたが、いかがでしたでしょうか?
劇場版第2作の公開を記念して書い・・・たわけではありませんが、時期的にそうなってしまいました。
やっぱり「陽子×綾」なんだよなぁって(何

ついに原作は完結してしまいましたが、アニメ3期を期待しつつ、今後もネタが思いついたら書いていきたいと思います。

ご意見・ご感想をお待ちしております。




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