ラブライブ!小説 「長電話の翌日に」






日曜日。
今日はμ’sの練習も無く、久しぶりに1日ゆっくり過ごせる日。
だから目覚ましもいつもよりだいぶ遅くセットして、思いっきり寝坊するつもりだった。

そんな私を目覚めさせたのは、目覚ましの音ではなく、電話の着信音。
薄目でケータイのディスプレイを見ると「にこちゃん」の文字。
人がせっかく気持ちよく寝ていたのに・・・と思いながらも、私は「応答」ボタンを押した。

でも、スピーカーから聞こえてきたのは、にこちゃんの声ではなかった。



『お姉さまが大変なんです! 助けてください!!』



私は、寝ぐせを整えるのも忘れて、にこちゃんの家へ急いだ。

――

「にこちゃんは!?」

玄関のドアを開けるなり、返事も待たずに家の中に入る。

「真姫お姉さま!」

駆け寄ってきたのは、にこちゃんの妹のこころちゃん。
さっきの電話の声の正体も、この子だ。

「ゆっくりで良いから状況を教えて?」

とりあえず、慌てているこころちゃんを落ち着かせ、にこちゃんがどんな状況なのかを訊いてみる。

「いつものように、朝起きてお姉さまと一緒に朝ごはんを食べたんです。」

一言一言はっきりと言うこころちゃん。

「そしたら、お姉さまが急に倒れてしまって。おでこを触ったらすごい熱で・・・。」

でも、その表情はとても不安そうで、今にも泣き出してしまいそうで。

「でも、今日はお母さまも朝早くから出掛けていて、誰もいなくて・・・。」

小さな体は、すごく震えていて。

「お姉さまのケータイ電話を見たら、一番上に真姫お姉さまの通話履歴があったので、それで・・・。」
「分かったわ。」

にこちゃんを見ると、しっかりと布団が掛けられており、額には水で濡らしたタオルが置かれている。

「これはこころちゃんがやったの?」
「はい・・・。」
「偉いわね。」

まだ小さいのに、1人でここまでできるのはたいしたものだ。

「あとは私に任せて、こころちゃんは他の部屋に移動してくれる?」
「でも、お姉さまが・・・。」
「もしこころちゃんに病気が移ったらにこちゃんが悲しむわ。」

私は、震えているこころちゃんを抱きしめた。
こころちゃんの体から力が抜け、震えが止まるのが分かった。

「大丈夫、これでも医者の娘なんだから! 絶対ににこちゃんを治してみせるわ。」
「分かりました。お姉さまをよろしくお願いします。」

こころちゃんが部屋から出ていくのを確認して、私はにこちゃんに向き直る。
こころちゃんには強気に言ったけど、ほとんど何も持ってきていない以上、私も人並みのことしかできない。

とりあえず、タオルで汗を拭きとってあげる。
あとは、冷たいタオルを首筋と脇の下に挟んで様子を見ることにした。


「ピー。」


ベランダから、甲高い電子音が聞こえてきた。
音の正体が気になってベランダに出てみると、ちょうど洗濯機の動きが止まるところ。

続いて、台所からも電子音がしたので覗いてみると、ポットが湯気を出していた。
そして、シンクには洗っていない食器が残っている。

私は、リビングでここあちゃんと虎太郎くんと遊んでいたこころちゃんに訊いてみた。

「ねぇ、こころちゃん。にこちゃんは今日何時くらいに起きたか分かる?」
「うーん、こころが7時くらいに起きた時にはもう朝ごはんができてたので、6時くらいだと思います。」
「そう・・・。」

洗濯物を洗濯機にかけて、妹たちに朝食を作って・・・。
今日は休日だけど、にこちゃんは妹たちのために早起きしていたんだ。

「私が昨日、あんな長電話しなければ・・・。」

そう、私は昨日の夜、にこちゃんに電話した。
特に理由は無かったけど、つい話が盛り上がって、結局日付を越えるまでおしゃべりしてた。
だから、にこちゃんの携帯電話には、私との通話履歴が一番上に残ってたんだけど。

にこちゃん、全然寝れてないんじゃない・・・。

「ごめんね、にこちゃん・・・。」
「どうしたの真姫ちゃん、いきなり謝ったりして。」

弱々しいながらもはっきりと聞き取れるその声は、間違いなくにこちゃんのもので。

「にこちゃん。目、覚めたの?」
「うん。いきなり真姫ちゃんが謝ってるんだもん。びっくりしちゃった。」

こんな時でも、にこちゃんは笑顔を忘れていなかった。

「それより、せっかくの休日だったのに、私こそごめんね真姫ちゃん。」

どうして私はにこちゃんに謝られているんだろう。
慌てて、私はにこちゃんに言った。

「だって、昨日私が夜遅くまでにこちゃんに電話してたせいで・・・。」
「それは違うわ。」

しかし、私の言葉は、すぐににこちゃんに遮られた。

「アイドルにとって体調管理は基本中の基本。自分の体調管理もろくにできないにこは、アイドルとして失格よ。」

かすれた声で、しかし強い口調でそう言うにこちゃん。

「だから、真姫ちゃんは何も悪くないの。」
「でも・・・。」

そんなことを言われても、私は到底納得できない。

「それじゃあ、こうしましょう。」

そんな私に、にこちゃんが提案してきた。

「今日1日、ずっとにこの傍にいてくれる?」

それは、いかにもにこちゃんらしい提案で、可笑しくてつい笑みがこぼれた。

「そんなの、言われなくても当たり前よ。」

にこちゃんの熱が治るまで、つきっきりで看病してあげるんだから。


――


「あ、そうそう。チビたちの面倒もよろしくね!」
「ヴェエエ・・・。」



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

なんだかんだで「ラブライブ!」小説も9作品目と、かなり増えました。
しかも、そのすべてが「にこ×真姫」という酷い偏り具合ですが、「にこまき」が大好きだからしょうがないね!(何

今までの作品はイチャイチャしたものが多かったので、今回は若干シリアスにしてみました。
(この程度の内容がシリアスに入るのかどうかはさておき・・・)
にこは4人弟妹の長女ですし、ほかの弟妹とは歳が離れているので、いろいろと苦労しているのではと思います。
そして、にこの母は、アニメではリクルートスーツ姿で登場するので、忙しくてあまり家に居ないのではと想像してみたり。
スクールアイドル活動の傍ら、家事もこなさなければならないと考えると、休日も気が休まらず、たまには体調を崩してしまうのかな・・・というところから、今回の小説となりました。

ご意見・ご感想をお待ちしております。



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