みつどもえ小説 「別に心配なわけじゃないわよ!」





昨日、私はみつばとケンカをした。
ケンカ自体は毎日のようにしているから、別に珍しくもなんともないのだけれど。

今日、みつばは学校を休んでいる・・・。
三女によると原因は風邪らしいけど。


― みつばの顔なんて見たくもないわ! ―


昨日のケンカで私が言ってしまった一言。
もしかしたら、この言葉のせいだったり・・・と思ってしまう。

もっとも、ケンカするたびにこのようなことを言っているから、今回はたまたま偶然なんだろうけど・・・。
でも、やっぱり気になってしまう。


あれ・・・、気になってしまう?

どうして私がみつばのことを気にしなきゃいけないのよ。冗談じゃないわ。
そりゃ、あんなこと言った私も悪いけど、みつばが勝手に休んだだけじゃない。
むしろ、めったに学校を休まないみつばが休んでくれて清々するわ!




「杉崎?」
「え? あ・・・な、何?」
「どうしたんだ? さっきからずっと呼んでたんだぞ?」
「そうだったの? ゴ、ゴメン・・・。」


気づけば放課後。今は吉岡、宮・・・下のいつものメンバーで下校中。

今日1日、私はずっと何かが足りない感じがして、ずっと胸のあたりがモヤモヤしていた。
おかげで友人の言葉も耳に入らないじゃないの・・・。


「もしかして杉ちゃん・・・。」

私の様子を見た吉岡が、何かを思いついたように話しかけてきた。
もしかして、モヤモヤの原因が分かるのかしら。

「みっちゃんのことが心配なのね!」
「は?」


あぁ、吉岡はそういうやつだったわね・・・。
期待した私がバカだったわ。

「なるほど、張り合う相手がいなくて寂しいんだな。」

もう片方もなんか言ってるし・・・。
とてもじゃないけど付き合ってられないわ。

「2人して何言ってんの? もう、私先に帰るから! じゃあね!!」


その場の空気に耐えきれず、私は2人から離れるように駆け出した。


「愛の形は人それぞれだよっ! 杉ちゃんがんばって!!」


・・・なんか言われたような気がしたけど、無視しておいた。



「まったく、なんで私がアイツの心配なんてしなきゃいけないのよ・・・。」

2人に不名誉なことを言われた気がして、思わず口に出してしまう。
吉岡と宮下の姿はとっくに見えなくなっていたけど、またあの2人に会えば何を言われるか分からない。
だから、私は適当に回り道をして帰ることにした。



「あれ・・・なんで?」

気づいたら、目の前にみつばの家があった。
無意識のうちに、足が勝手に向かっていたようだ。

なんでよりによってみつばの家なんかに・・・。とっとと帰らないと ――


「杉ちゃん! みっちゃんのお見舞いに来てくれたんスね!」
「え? ちょ・・・。」
「ささ、家に入るっス。」

まさかふたばに見つかるなんて・・・。口を開く暇も無く、私は寝室に通された。


「みっちゃん、今は寝てるっスけど、熱が39度もあってとても苦しそうっス。」
「39度!? そんなに?」

これには驚いた。
てっきり風邪をこじらせた微熱程度だと思っていたけど、まさかそんなに重症だったなんて・・・。
さっき吉岡たちにはあんなこと言ったけど、さすがに心配だわ。

みつばを起こさないように、二段ベッドの上段へ登る。
と、下からふたばの声が聴こえてきた。


「小生、ちょっと用事があるっス。お留守番よろしくっス!」

・・・え?
留守番って何?



「あ、ちょっと・・・」

呼び止めようとしたけど、ちょうどドアが"ガチャ"と音を立てて閉まったところで、ふたばの姿はすでに無かった。


「まったく、他人に留守番を頼むってどういう神経してんのよ・・・。」

思わず呟いてしまった私の独り言が部屋に響く。
他に響くのは、みつばの寝息だけ。



「まったく、いつもどんだけアンタがうるさいか分かるわね。」

みつばを起こさないように言う。
寝ているみつばはあまりにも静かで、まるでみつばじゃないみたいで・・・。

物足りない。

いつもいつも口うるさいみつばと会って、少し静かにしてほしいと思うことは何度もあった。
でも、こうして静かなみつばを見ると、あの口うるささこそがみつばなんだと思った。


そう・・・今日1日、みつばのいない学校を過ごして分かった。

みつばは、私が素でケンカできる唯一の相手。
ブルジョアだから・・・という理由で私のことを毛嫌いする人もいる中で、みつばは他の人と変わりなく接してくれる。

みつばは、私にとって想像以上に大きな存在になってしまっていたんだわ。



私はみつばが寝ていることを確認する。

「あんなこと言って悪かったわね・・・。は、早く直しなさいよ!」

とりあえず一言謝りたかった。
寝ているみつばに言っても無駄かもしれないけど、たぶん面と向かって言うのは無理。

こうやって寝ているみつばに言うのも恥ずかしいくらいだし・・・。
うぅ・・・。



「ただいまっス!」

どうやらふたばが帰ってきたようね。そろそろおいとましようかしら。

私がベッドから降りたところでちょうどふたばが部屋に入ってきた。


「杉ちゃんお留守番ありがとうっス! みっちゃんの様子はどうっスか?」
「相変わらず寝てるわよ。それじゃ、私は帰るわ。」

言いながら玄関へ向かう私。
くつを履いたところで言い忘れていたことを思い出した。

「そうそう、くれぐれもみつばには私が来たこと言わないでよ。」
「どうして?」
「どうしても!」

私が来てたなんてみつばに知れたら、また学校でからかわれるに決まってるわ。
けど、ふたばに言っても理解してくれそうにないから、それは言わずに私は丸井家から飛び出した。


アンタがいないとつまらないんだから、早く元気になりなさいよね、バカ・・・。




〜翌日〜


「あら、みつば。風邪は治ったの?」
「ええ。誰かさんがお見舞いに来てくれたおかげかしらねぇ。」
「あ、そう。」


・・・あれ?

「ちょ・・・なんでアンタ、私が行ったこと知ってんのよ!? まさか、ふたばが・・・。」
「実は私、あの時起きてたのよね。」

え、それじゃあ・・・。

「その・・・、ありがと。あと、あのことは気にしてないから心配しなくていいわよ。」

まさか聞かれていたなんて・・・。一生の不覚!
こうなったら、昨日の分までみつばを弄ってやるんだから!!



「はぁ? 勘違いしないでよ! 私はただアンタの弱った顔を見たかっただけよ!!」



最後まで小説をお読みいただき、ありがとうございました。

今回は、初めて「みつどもえ」の小説に挑戦してみました。
書いていて思ったのは、やはり難しかったです。
小学生の純粋な気持ちを考えながら書きたかったのですが、いろいろ知ってしまっている大学生の私には、あまりにも厳しかったです。

皆様に少しでも杉崎とみつばの気持ちが伝わればと思います。


ご意見・ご感想をお待ちしております。



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