ポケスペ小説「赤く熟す果実のように」

ポケスペ小説  公開期間2009年8月8日〜8月31日





いつからだろう・・・


「あの人」への憧れが、違う感情へと変化したのは

    「あの人」に尊敬ではない、特別な気持ちを抱くようになったのは

        「あの人」を少し見るだけで、胸がドキドキするようになったのは


すべてが、今まで経験したことのない初めての感覚で、最初は何なのか分からなかった・・・




― 赤く熟す果実のように ―




「ブルーさんに頼まれた時はこんな感覚は感じなかったのになぁ・・・。」


はぁ・・・とため息をつくと、背後から声が返ってきた。

「アタシが何だって?」
「ブ、ブルーさん! どうしてここに!?」
「どうしてって、ここアタシの家じゃないの。アタシが少し目を離すとこうなんだから・・・。イエロー、しっかりしなさいよ。」

ブルーさんがティーカップを2つ持って入ってきた。そういえば、紅茶のおかわりをブルーさんに頼んでいたんだっけ・・・。
今日はブルーさんに呼ばれて、ブルーさんの家に来ていたんだった。


「またレッドのことかしら?」

ブルーがニヤニヤした笑顔で聞いてきた。顔が急に熱くなるのを感じた。

「ち・・・違いますよ!」
「何言ってるの、そんなに顔赤くしちゃって。バレバレよ♪」

必死に否定したけど、やっぱり顔に出てしまったみたいだ。どうしてすぐ顔に出ちゃうんだろうなぁ・・・。
ボクは恥ずかしくなって俯いた。



「告白・・・しないの?」
「な、何言ってるんですか! 告白とかそんな・・・。」

いきなりのブルーさんの言葉に、俯かせていた顔をあげて思わず叫んでしまった。


「レッドの事、好きなんでしょ? 違うの?」

ブルーさんの言葉を返すことができない。




そう、ボクはレッドさんの事が

『好き』

だから。違わないから・・・。



レッドさんを見るたびに、この想いはどんどん強くなってきて。もう胸の中にしまっておくのが苦しいくらいになって・・・。
たった二文字の言葉・・・言ってしまえたらどんなに楽になるだろう、と何度も考えた。



でも・・・



「ボクは、レッドさんとの今の関係を崩したくないんです。想いを伝えて関係が崩れてしまうのが、嫌なんです・・・。
 レッドさんはボクが女であることを知ってからも、男装してた頃と同じ様に接してくれています。
 男を装っていたボクに、いつも笑顔を向けてくれています。だから― 」



そのたった二文字の言葉が、言えない・・・。



ボクの話を聴いたブルーさんは、少し考えるしぐさをして口を開いた。

「今のあなたの話を聴くと、レッドがあなたに対して好意を持っていることは確かだと思うわ。
 もしあなたのことが嫌いなら、笑顔なんて向けないだろうし・・・。」


ブルーさんの言うことはもっともだと思った。
レッドさんはボクに好意を寄せてくれているんだ。無意識のうちにボクの口から安堵のため息が出た。


「あなたの『今の関係』を崩したくないというのはよく分かるわ。でも、想いを伝えなければ可能性はゼロなのよ。
 伝えれば必ず100になるとは限らない。けど、相手が自分に好意を寄せてくれているなら、100になる可能性は高くなると思わない?」

想いを伝えなければ可能性はゼロ・・・ブルーさんの言った言葉が、ボクの心に響いてくる。


「それに、想いを伝えて『今の関係』が崩れるかどうかなんて分からないじゃない?
 イエローが今まで通りに接すれば、レッドだってきっと・・・いいえ、絶対に今までと同じようにイエローに接してくれるわ。」

レッドとは十何年という付き合いだもの、そのくらい分かるわ・・・とブルーさんは付け加える。



そうか、ボクは今まで・・・


             想いを伝える=関係が崩れる 


                           だと思っていたんだ。



失敗したらもうレッドさんと会っちゃいけないんだ、そう勝手に思い込んでた。
でも、そうじゃないんだ。失敗しても自分から避けちゃだめなんだ、その先もいつも通りにレッドさんと接していけばいいんだ。

そう考えたら、なんとなくだけど、気持ちが楽になった気がした。




「告白するかどうかはあなた次第よ。よく考えて決めなさい。」

最後にそう言って、ブルーさんはボクに笑顔を向けた。しかしその笑顔は、もう先ほどのニヤニヤしたからかい顔ではなかった。
ありがとうございます、とブルーさんにめいいっぱいのお礼を言い、ボクは玄関を出た。






そして、決意した。



― ボクは、この想いを伝える ―




初めてこの想いを抱かせてくれた「あの人」に・・・。





とはいったものの、どうやって想いを伝えればいいのか分からない。電話? メール? やっぱり直接?
自宅までの道中を歩きながら考えていると、名前を呼ばれた。


「イエロー!」


その声には聴き覚えがあった。いつも聴くと、とても嬉しくなってしまう声・・・。一瞬幻聴かとも思った。
しかし、再度名前を呼ばれ、ボクは声のする方向を振り向いた。



「レッド・・・さん!?」


幻聴なんかではなかった。確かにそこには「あの人」が、レッドさんがいた。
ボクは駆け寄って、レッドさんの顔を見上げる。


「ど・・・どうしたんですか?」


だめだ・・・顔を見た瞬間に、さっきまで考えていた事が急に蘇ってきて、心臓の鼓動がどんどん早くなっていくのが分かった。きっと顔も赤くなっているんだろうな・・・。
まさか、こんな時に会ってしまうなんて・・・。心の準備なんてまったくできていないのに。



「い・・・いや、ちょっとトキワジムの掃除を手伝いにグリーンのところに行ってたんだ・・・。」


なんかいつもとレッドさんの様子が違うような・・・。心なしか、レッドさんの顔も赤くなっているように見えるけど、きっと気のせいだよね。


「そうですか・・・。」
「い、イエローはどうしたんだ?」
「い・・いえ、ちょっとブルーさんのところへ行ってきたんです。」

今にでも心臓が爆発してしまいそうで、言葉を口にするのもやっとの状態で・・・。もうレッドさんの顔を見ることはできなくなっていた。


「そうなんだ・・・。」


会話が途切れた。いつもはよくしゃべるレッドさんが話題を振ってこないなんて珍しい。

そう、想いを伝えるなら今しかない・・・。もし今を逃したら、次いつチャンスが来るか分からない。よし・・・言うぞ・・・!
ボクは大きく息を吸い、それを言葉にしようとした。





「イエロー。」




レッドさんの声に、ボクは思わず顔を上げた。明らかにいつものレッドさんの声じゃなかったから。
いつものボクなら「どうしたんですか?」と訊ねるのに、この時はなぜかその言葉が出てこなかった。




「このタイミングで言っていい事なのか分からないけど・・・、聴いてほしい事がある。」



ボクはレッドさんの顔を見たまま動けなかった。なんとなく、返事ができない空気だった。


そして、しばしの沈黙・・・。
次の瞬間、ボクは予想もしていなかった言葉を聴いた。






「俺は、イエローが好きだ。」






ボクは夢を見てるんじゃないかと思った。



「いつからかは分からないけど・・・、イエローを見ると心臓がドキドキするようになって、でも最初はそれが何なのか分からなかった。
 でも、いつだってイエローの笑顔が見たくて、会いたくて・・・。ずっとイエローのことばっかり考えるようになって、俺分かったんだ。
 俺はイエローのことが『好き』なんだって・・・。だから・・・、もしよかったら、俺と付き合ってほしい。」




気づいたら、ボクはレッドさんに抱きついていた。
レッドさんの体温が伝わってくる。夢じゃないんだ・・・。

現実のことだと思ったら、急に熱いものがこみ上げてきて・・・。目を閉じて必死に耐えようとしたけど、もう無理だった。


「い・・・イエロー!? ごめん、俺泣かせるような事言ったか・・・?」

レッドさんらしい誤解の仕方・・・でも、この誤解を解いてあげなきゃ。ボクも想いを伝えなきゃ・・・。


「違うん・・・です・・・。すごく・・・嬉しいんです・・・。ボクも・・・ボクも、レッドさんのこと・・・ずっと・・・好きだったんです。
 ずっと想いを伝えたかった・・・けど、言えなくて・・・。」

嗚咽を抑えきれなくて、うまく声を出すことができなかった・・・。レッドさんにちゃんと伝わったか不安になる。
でも、泣いている顔を見られたくないのと、レッドさんの顔を見るのが怖くて、どうしても顔をあげることができなかった。



「・・・本当に?」

少し間を開けて戻ってきたレッドさんからの返事。


「本当ですっ! だから・・・ボクからも、ボクからも・・・お願いしますっ!」

レッドさんに答えるために、ボクは精一杯大きな声で言った。



「ありがとうイエロー。俺、すごく嬉しいよ!」




ここでようやくボクはレッドさんの顔を見ることができた。それは、太陽みたいに眩しくて、でもとても穏やかで・・・。





ボクの大好きな笑顔だった。






最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
久々のポケスペ小説、それも告白物だったのでなかなか苦戦しました・・・。

実は、この小説自体は今年3月くらいから書き始めていたんですが、途中で 「らき☆すた」小説 を書いたため、ずっと放置プレイでしたw
で、らき☆すた小説が完成してこちらを再開しようとしたら、まったく書いた内容を覚えておらず、ほぼ一から書き直しという・・・(orz
完成したの8月に入ってからだったりしますw 本当にギリギリでした・・・。

今回、初めて「1つの話を2人の視線で見る」というのに挑戦してみました。ちなみに、今読んでいただいたのはイエロー視点になります。
レッド視点を読みたい方は こちら からどうぞ〜。
やはり2人視点は難しいですね・・・。2人を同じ話に入れないといけないので、ここでレッドがこう言ったら、さっきのイエローの反応と矛盾すんじゃん・・・
という感じでかなり苦戦してしまいました。やはりこういうのはプロの小説家がやるもので、素人が軽い気持ちでやるものではありませんね。

それでも、このような形でレッドとイエローの告白小説を書けて、とても楽しかったです。私はこの2人を応援しています(何
ちなみにタイトルはちょっとカッコつけただけですw 特に深い意味は無かったり・・・。


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《制作予定》
今後しばらくは「らき☆すた」小説の制作をするつもりです

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