ポケスペ小説「黄色く色づく紅葉のように」

ポケスペ小説  公開期間2009年8月8日〜8月31日





いつからだろう・・・


「あいつ」を意識し始めるようになったのは

    「あいつ」に特別な感情を抱くようになったのは

        「あいつ」を見ると、体中が熱くなるようになったのは


すべてが、今まで経験したことのない初めての感覚で、最初は何なのか分からなかった・・・




― 黄色く色づく紅葉のように ―




「トキワの森で助けた時は、本当に何とも思わなかったんだけどな・・・。」


はぁ・・・とため息をつくと、背後から声が返ってきた。

「トキワが何だ?」
「グリーン! どうしてここに!?」
「どうしてって、ここトキワジムだ。俺がいて当然だろうが・・・。まったく、大丈夫か?」

グリーンがゴミ袋を持って入ってきた。そういえば、グリーンと掃除をしている途中だったな・・・。
今日はグリーンに呼ばれて、トキワジムに来ていたんだった。



「なんかトキワジムに不満でもあるのか?」

グリーンが怖すぎる笑顔で聞いてきた。
確かにトキワジムに対する不満は無くはないが・・・今不満点を言えば大変なことになるだろう。俺は全力で否定した。


「ち・・・ちげえよ! そうじゃなくてさ・・・。」
「冗談だ。イエローのことだろ?」

今度はクールな笑顔で聞いてくるグリーン。その顔がなんだか無性にムカつく・・・。いや、絶対に口には出さないけどな。



「あぁ・・・まあ、そんなとこ・・・。」

少しふてくされながら俺は曖昧に返事をした。




「あいつに、想いを伝えないのか?」
「なな何言ってんだよ! 想いを伝えるとかそんなの・・・。」

いきなりのグリーンの言葉に、思わず叫んでしまった。


「イエローの事、好きじゃなかったのか?」


グリーンの言葉を返すことができない。


事実、俺はイエローにその感情を抱いていたから・・・。

イエローを見るたびに、この想いはどんどん強くなってくる。もう胸の中にしまっておくのが苦しいくらいだ・・・。

たった二文字の言葉・・・言ってしまえたらどんなに楽になるだろう、と何度も考えた。



でも・・・



「俺は、イエローとの今の関係を崩したくない。想いを伝えて関係が崩れるのが、嫌なんだ・・・。
 俺に正体がバレたあとも、イエローは男装してた時と同じ様に俺に振舞ってくれている。
 女であることを気付いてあげられなかった俺に、いつも笑顔を向けてくれている。そんな関係をずっと保ちたいんだ。
 だから― 」


そのたった二文字の言葉が、言えない・・・。



気付けば、グリーンが真顔になっていた。


「お前の話を聴く限り、少なくともイエローがお前を嫌ってるとは思えない。
 嫌いなら笑顔を向けるなんてことないだろうからな。向こうはお前に対して好意を抱いてるんじゃないのか?」


グリーンの言うことは確かだと思った。
イエローは俺に好意を寄せてくれている・・・。俺の口からは無意識のうちに安堵のため息が出ていた。


そんな俺の様子を確かめるようにして、グリーンは続けて口を開く。

「お前は勘違いをしている。想いを伝えたら必ず『今の関係』が崩れると思っているんじゃないか?
 それは違う。崩れるかどうかはお前次第だ。お前が今まで通りに接すれば、あいつから離れていくなんてことは絶対に無い。」

少なからずイエローと共に修業した身だ、そのくらい分かる・・・とグリーンは付け加える。




そうか、俺は今まで・・・


            想いを伝える=関係が崩れる 


                          だと思っていたんだ。



失敗したらもうイエローと会ってはいけないんだ、そう勝手に思い込んでた。
でも、そうじゃない。失敗しても自分から避けたらダメなんだ、その先もいつも通りにイエローと接していけばいい。


そう考えたら、なんとなく気持ちが楽になった気がした。




「想いを伝えるかどうかはレッド、お前次第だ。よく考えろ。」


真剣な顔のまま最後にそう言って、グリーンは部屋を出ていこうとする。
俺はその後ろ姿に、「ありがとう」と礼を言ってジムをあとにした。






そして、決意した。



― 俺は、この想いを伝える ―



初めてこの想いを抱かせてくれた「あいつ」に・・・。





とはいったものの、どうやって想いを伝えればいいのか分からない。電話? メール? やっぱり直接か?
自宅までの道中を歩きながら考えていると、ふと前方に人影が見えた。


綺麗な金髪を一つにまとめたポニーテール。あの後ろ姿は・・・


いつも俺を喜ばせてくれる、一緒にいるだけで嬉しくなってしまう「あいつ」。間違いなくイエローだ。

まさかこんな所で見てしまうとは・・・。
これはある意味チャンスなのか、でもまだ言葉も全然考えてないし・・・。でもこれを逃したら・・・

頭の中をさまざまな考えが駆け巡り、半ば混乱状態になる。あー、もうやけくそだ!




名前を呼ぶ。
イエローは立ち止ったが、こちらを見ない。ちょっと声が小さかったか・・・。


「イエロー!」


再度名前を呼ぶと、イエローが振り向いた。


「レッド・・・さん!?」

いかにもビックリしたような声を出してこちらへ駆け寄ってくる。俺がいきなり呼んじゃったからかな・・・。


「ど・・・どうしたんですか?」

イエローが俺の顔を見上げて聞いてくる。
ダメだ・・・顔を見た瞬間に、体中が熱くなって、心臓の鼓動がどんどん早くなっていくのが分かった。
きっと顔も赤くなっているに違いない。



「い・・・いや、ちょっとトキワジムの掃除を手伝いにグリーンのところに行ってたんだ・・・。」
「そうですか・・・。」


しまった、明らかに変なしゃべり方になってしまった・・・。イエローに気づかれないかな。
そういえば、なんかイエローの顔も赤くなっているように見える。いや、たぶん俺の目がおかしいんだろうな・・・。



「い、イエローはどうしたんだ?」
「い・・いえ、ちょっとブルーさんのところへ行ってきたんです。」

イエローが視線を俺の顔から逸らした。気付かれたのかな・・・。


「そうなんだ・・・。」


会話が途切れた。いつもはよくしゃべるイエローが話題を振ってこない。

落ちつけ俺、言うなら今しかない。もし今を逃したら、次いつチャンスが来るか分からない。
イエローに気づかれないように深呼吸をする。早かった心臓の鼓動が少しずつもとに戻っていくのが分かった。





「イエロー。」




いつもとは違う調子でその名前を呼ぶ。そうしないと、せっかく落ちついてきた心がまた暴れだしそうだったから。

今までずっと下を向いていたイエローが、俺の顔を見た。もう俺は目を逸らさない。




「このタイミングで言っていい事なのか分からないけど・・・、聴いてほしい事がある。」




イエローは返事をせず、ずっと俺の顔を見続けている。
いつものイエローなら「なんですか?」とか言ってくるけど、そういうことを言わないあたり、やっぱり俺の異変に気づいているんだろうか・・・。


今一度頭の中で言うべき言葉を整理する。よし、大丈夫・・・言える。






「俺は、イエローが好きだ。」






言った瞬間、俺の頭の中は真っ白になった。完全に冷静さを失っていた。
ついに、言ってしまったんだ・・・それだけが、俺の頭を支配していた。



そのあと、俺は何を言ったのかまったく記憶にない。最後に「付き合ってほしい」とは言った気がするけど・・・。

気付いたら、イエローに抱きつかれていた。顔は俺の服に埋められよく見えなかったけど、明らかに泣いているのが分かった。


「い・・・イエロー!? ごめん、俺泣かせるような事言ったか・・・?」

もしかしたら、俺はとんでもない事をイエローに言ってしまったのかもしれない。不安になった俺は、必死にイエローに事情を聞く。



次の瞬間、俺は予想もしていなかった言葉を聴いた。





「違うん・・・です・・・。すごく・・・嬉しいんです・・・。ボクも・・・ボクも、レッドさんのこと・・・ずっと・・・好きだったんです。
 ずっと想いを伝えたかった・・・けど、言えなくて・・・。」


嗚咽を交えながら、必死に俺に伝えてくるイエロー。
未だに冷静さを取り戻せていない俺は、その言葉を理解するのに時間が掛かった。


俺のことを好きだった? ずっと想いを伝えたかった?



「・・・本当に?」

とても信じられず、俺の口からは無意識のうちにその言葉が出ていた。


「本当です! だから・・・ボクからも、ボクからも・・・お願いしますっ!」

顔は埋めたまま、精一杯大きな声でイエローは俺にそう言ってきた。


そこでようやく分かった。イエローも俺の事が好きだったんだと、俺と付き合ってくれるんだと・・・。
一瞬夢じゃないかと思った。けど、しっかりとイエローの体温を感じる。これは現実なんだ。



本当に嬉しくて、嬉しくて。俺は正直に自分の気持ちを伝えた。

「ありがとうイエロー。俺、すごく嬉しいよ!」


イエローが顔を上げる。それは、目には涙を浮かべていたけど、太陽みたいに眩しくて、でもとても穏やかで・・・。





俺の大好きな笑顔だった。






最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。
久々のポケスペ小説、それも告白物だったのでなかなか苦戦しました・・・。

実は、この小説自体は今年3月くらいから書き始めていたんですが、途中で 「らき☆すた」小説 を書いたため、ずっと放置プレイでしたw
で、らき☆すた小説が完成してこちらを再開しようとしたら、まったく書いた内容を覚えておらず、ほぼ一から書き直しという・・・(orz
完成したの8月に入ってからだったりしますw 本当にギリギリでした・・・。

今回、初めて「1つの話を2人の視線で見る」というのに挑戦してみました。ちなみに、今読んでいただいたのはレッド視点になります。
イエロー視点を読みたい方は こちら からどうぞ〜。
やはり2人視点は難しいですね・・・。2人を同じ話に入れないといけないので、ここでレッドがこう言ったら、さっきのイエローの反応と矛盾すんじゃん・・・
という感じでかなり苦戦してしまいました。やはりこういうのはプロの小説家がやるもので、素人が軽い気持ちでやるものではありませんね。

それでも、このような形でレッドとイエローの告白小説を書けて、とても楽しかったです。私はこの2人を応援しています(何
ちなみにタイトルはちょっとカッコつけただけですw 特に深い意味は無かったり・・・。


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《制作予定》
今後しばらくは「らき☆すた」小説の制作をするつもりです

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