ゆゆ式小説 「市尾」




今日も1日の授業が終了した。

「よう市尾!」

部室に足を踏み入れると同時に、ゆずこにそう呼ばれた。
こいつがいきなり意味不明なことを言うのには慣れたが、さてどう返すべきか・・・。

「なんだ、市尾って私のことか。」

少し考えたが、結局普通の返答になってしまった。

「いやぁ、"いちい"って駅検索したら、一番近い駅名が"いちお"だったから。」
「いちいってありそうだけどねー。」

なるほど、そういうことか・・・。
なんで駅名調べてるのかツッコんだら負けなのかな。

「ちなみにその市尾って駅はどこにあるんだ?」
「奈良県だって!」
「微妙!」

奈良とか修学旅行くらいでしか行かないよな・・・。

「あと、"ゆい"って駅は静岡県にあるって。」
「行ってみたいねー、唯ちゃんの駅。」
「ねー。」
「いや、私の駅じゃないし。」

なんで私の名前ばっかり調べてるんだよ。

「じゃあ今度は"野々原"で調べてみろよ。」
「んーとねー。」

そう言いながら、ゆずこはキーボードを操作し、検索を掛ける。

「一番近い駅名は"ののいち"かな、石川県だって。」
「何か忍者みたいだねー。」
「それくのいちな。」

今の縁のボケは正直予想できてたな・・・。

「じゃあ次は縁ちゃんね。」
「日向は普通にありそうだけどな。」

今度は私が検索してみる。

「お、千葉県に"日向"って駅があるぞ。残念ながら読み方は"ひゅうが"らしいけどな。」
「他にも日向和田(ひなたわだ)とか、漢字は"日当"だけど"ひなた"って読む駅もあるんだね。」
「たくさんあって嬉しいー。」

なんだその仲間がたくさん居て嬉しい、みたいなノリは。
まぁ、分からんでもないが・・・。

「他の人も調べてみようよー。」
「じゃあ、あいちゃんは?」

続けて私が検索を掛ける。

「相川駅は大阪にあるみたいだな。読みもそのまま"あいかわ"。」
「おぉ、すごいビンゴ感!」
「じゃあふみちゃんは?」

ありそうだな・・・と思いながら検索をしてみたけど、意外にもヒットしなかった。
「"長谷川"は無いな。長谷ならあるみたいだけど、しかも3つ。」
『3つ!』

ゆずこと縁が声を揃えて言う。

「神奈川県と兵庫県と広島県に1駅ずつだって。ちなみに広島県の長谷は"ながたに"と読むらしい。」
「じゃあ、長谷から長谷までの定期券とか乗車券買えるのかな?」
「どうだろうな。なんか駅員さん混乱しそうだなそれ。」

そんなことを言ってる間に、今度は縁がキーボードを打ち始めた。

「"岡野"もありそうで無いんだねー。岡が入る駅名はたくさんあるけど。」
「長野県に岡谷(おかや)って駅があるんだって。おかやんってあだ名ここから来てるのかな?」
「いや、違うだろ。」
「じゃあ最後はやっぱりおかーさんかな。」

そう言いながらゆずこがキーボードを打ち込む。

「"松本"は有名だろ。長野県に結構大きい駅あるし。」
「あずさ2号だね!」
「いつのネタだよそれ・・・。つーかよく知ってるな。」

それを知ってる私もどうなんだよ・・・。
親がよく歌ってるんだよな、あずさ2号。

「ちなみに、北松本、南松本、西松本はあるけど、東松本だけはないらしい。」
「惜しいねー。」
「惜しいな。」

結局全員分の名前を調べてしまった。
そういえば、気になっていることがひとつ。

「今日のテーマって駅だったのか?」
「成り行きで調べ始めちゃったけど、もうめんどいからそういうことでいいや。」
「おい。」

ゆずこらしいというかなんというか・・・。

「じゃあまとめちゃおっか。」

ゆずこはそう言うと、ペンを持ってホワイトボードへ向かっていく。

「東松本駅は無い。」
「そこかよ!」
「あはははは!」

縁の笑い声に混ざって、下校を知らせるチャイムが鳴り響く。

「よし、帰ろう!」
「これから唯ちゃんち行っても良い?」

なんでだよ。

「はい! 私も行きたいです!」
「えー。」

部室の鍵を閉め、職員室へ向かう私たち。
今日も、平凡な1日が過ぎていく。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

3作目の「ゆゆ式」小説でしたが、いかがでしたでしょうか?
今回は、3月にOVAが発売されたのを記念しての公開となりました。

鉄道の駅名ネタは、正直どの作品でも使える反則技みたいなものですよねw
ですが、シチュエーション的には情報処理部が一番合っていると思い、ゆゆ式で書いてみました。

ぜひ、OVAに続いて2期を期待したいところです。

ご意見・ご感想をお待ちしております。


【制作予定】
未定



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