ゆゆ式小説 「名前で呼んで」





「佳。」
「ん?」
「あれ見て。」

長谷川が指差すほうを見ると、櫟井たちがおしゃべりをしている。

「唯ちゃん膝枕して!」
「あ、ゆずちゃんずるい。私も!」
「いやしないから。」

相変わらずバカなことをやっているが、まぁいつもの光景である。
いったい何だというのか。

「佳、気づかない?」
「何が?」

分からないの?・・・とでも言いたげな長谷川の表情に、イラっとしてしまう。

「佳、なんで人のこと苗字で呼ぶの?」
「は?」
「友達だったら普通名前で呼ぶと思うんだけど、あの子たちみたいに。」

櫟井たちのほうを見ながらそう言う長谷川。
こいつは今さら何を言っているのか。

「いや、そんなん人それぞれだろ。あたしは昔から苗字で呼ぶのがクセになってるんだよ。」

事実、記憶に残っている限り、今まで私は他の人を名前で呼んだ覚えはない。
特に理由は無いが、この荒々しい言葉遣いのせいかもしれない。

「そっか・・・。」

長谷川が呟くように言うと、そこで会話が途切れた。
時々、こいつが何を考えているのか分からない時がある。
今だって、話しかけてきたのはあいつなのに、あいつから会話を切りやがった。
すごくモヤモヤした気分になる。
だから、私は意地でも会話を続けてやろうと思った。

「もしかして、あいつらが羨ましいのか?」

理由なんて特に無い。
ただ、長谷川がずっと櫟井たちを見てたから、そう思ってるのかと思った。

「羨ましいわけじゃないけど・・・。」

長谷川がダルそうに口を開いた。

「私は佳のこと”佳”って呼んでるのに、佳は私のこと”長谷川”って呼ぶから、なんだか一方通行だなって。」
「つまり名前で呼び合ってる櫟井たちが羨ましいってことじゃねぇか。」

普段は適当なくせに、こういう時だけ変に気にするんだから面倒くさい。

「1回だけだかんな。」

名前を呼ぶだけで長谷川の機嫌が直るなら安いものだ。あたしは長谷川に聞こえるような大きな声で言った。

・・・何これ超恥ずかしい。
名前で呼ぶってこんなに恥ずかしいことなのか。
いや、あたしの場合は名前で呼んだことが無いからで、普段から名前で呼んでる人はそんなこと思わないのか。

「佳。」

呼ばれたので長谷川を見ると、満面の笑みであたしを見ていた。
機嫌が直ったようでなにより。

「もう一回言って。」
「言わんわ!」

でも、名前で呼ぶのは、封印することにした。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

かなり久々の「ゆゆ式」小説でしたが、いかがでしたでしょうか。
個人的に、佳だけがほかの人のことを苗字で呼んでいるのが気になったのが、今回の小説のきっかけです。
もしかしたら、何か理由があるのかもしれませんし、ただなんとなく呼んでいるだけなのかもしれない・・・。
なんだか、「らき☆すた」の柊かがみが日下部みさおと峰岸あやのを苗字で呼んでいたのを思い出してしまいました。
そうか、このネタ「らき☆すた」でも書けるな・・・(何

ご意見・ご感想をお待ちしております。



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