「おーっす、こなた〜。」 「やふー、かがみ。」 毎日のように交わす挨拶、もう1年以上続いている。 中学からの友達である峰岸や日下部ですら今まで名前で呼んだことがないのに、気付けば「こなた」と名前で呼んでいた。 こなたも私を「かがみ」と呼び、お互いそれだけ親しい仲になっていた。 「というわけでノート見せて〜!」 「またかよ! もっとちゃんと勉強しろよ!!」 いい加減なことを言うこなたに私がツッコむ、まるでお笑い芸人のコンビのような光景。 つかさにもツッコむけど、それとはまた違った不思議な感じ・・・。 いつの間にか、私にとってこなたはまさにお笑い芸人のコンビのように、いなければならない存在になってしまったのかもしれない。 一緒に登校し、一緒に昼食を食べ、一緒に下校する。 時には私がこなたの用事に付き合わされたり、時には私がこなたを用事に付き合わせたり。 そんな日常を繰り返すうちに、私がこなたに抱いてしまった感情・・・。 もし私が男だったら、この感情は至ってフツーのものだったのに・・・。 最初はこの感情が何なのか分からなかった。いや、分かろうとしなかったのかもしれない。 こなたを見るとドキドキして、顔が熱くなって・・・。 ラノベなんかでよく書かれてる表現だけど、まさかそんなはずはないと思ってた。 「きっと何か悪いものでも食べたんだわ」とか思うようにしてた。 でも・・・ ふと気付くと私はこなたを見ていて、目でこなたを追ってた。 もっとこなたの笑顔が見たいとか、こなたを喜ばせたいとか思うようになってた。 もっとこなたのことが知りたい、もっとこなたと一緒にいたい・・・ 私は素直になれない、思ってることを素直に言えない。だから、こなたにはツンデレとか言われてるけど。 もう少し素直になろうよ、私。これはもう、どう考えたって・・・ 『好き』 以外の何物でもないじゃない。 オタクで意味不明な話をしてくるし、毎日のようにアニ○イトやゲ○マーズに連れて行かれるし、 いつもだらけて私に助けを求めてきたりするし、私をからかってきたりするけど・・・ 私が勉強で行き詰っている時、こなたはいつも私を元気にさせてくれた。私を笑わせてくれた。 私が熱で寝込んだとき、なんだかんだ言ってこなたは真っ先にお見舞いに来てくれた。 誰にでも優しくて、いつも明るくて・・・。そんなところに惹かれたのかもしれない。 でも、この想いは絶対に知られてはいけない・・・。 こなたがギャルゲーの話をしている時にたまに言ってたけど、今まで他人事のように軽く聞き流してた『同性愛』という言葉。 私には関係ないと思っていたその言葉が、急に私の上に圧し掛かってきた。 そう、女である私が女であるこなたを『好き』になるなんて、フツーに考えればおかしいわけで。 もしこの想いを誰かに知られれば、私は確実に世間から見放されてしまう・・・。 こなたはもちろんのこと、妹であるつかさにまで嫌われてしまうかもしれない。 そんなの、絶対耐えられない・・・。 だから、ずっと胸の奥に秘めておこうと思っていたのに―― 自分の気持ちに気づいてからというもの、私はこなたをまともに見ることができなくなってしまっていた。 こなたにバレるのが怖くて、みんなにバレるのが怖くて・・・。 でも、そんな私の異変に、こなたが気付かないはずがなかった。 「かがみ、最近ずっと元気ないよ? どしたの?」 「そ、そうかなぁ? 別にいつも通りだけど〜。」 できる限り普段の私を演じたけど、そんなのがこなたに通じるわけがなくて。 「私でよかったら話聞くよ? いいアドバイスはできないかもしれないけどさ。」 「本当に何でもないんだってば! ほっといてよ!!」 放課後、いつの間にか2人きりになっていた教室に響き渡る私の声。気付いた時にはすでに遅かった。 「かがみ・・・。」 こなたの頬を涙が伝い、小さな体は小刻みに震えていた。 こなたに自分の想いを知られたくなくて、今の関係を維持したくて、ごまかしてきたのに・・・。目の前にいるこなたは泣いている。 私はこなたに笑顔でいてほしかったはずなのに、こなたに喜んでもらいたかったはずなのに・・・。 せっかくこなたは私を心配してくれたのに、私は想いを知られたくない一心でこなたを泣かせて・・・。 私は一体何をやっているんだろう。こんなの、間違ってる。 「いきなり叫んでごめん・・・。分かった、言うわ・・・。」 こなたが私をじっと見つめる。まだ涙は止まっていなかったけど、その目はしっかりと私を捉えていた。 「私は・・・私はね、こなた・・・。」 分かってる、言ってしまったらすべてが壊れてしまう・・・。 でも、これ以上こなたを悲しませたくはなかった。自分のせいで、こなたを泣かせたくはなかった。 「私は・・・こなたの事が・・・、好きなのよっ!」 私はその場に崩れ落ちるように座り込んだ。涙が頬を伝い、床にこぼれ落ちる。 この瞬間、私の中に築き上げられてきたすべてのものが壊れた。 きっと明日から、私はこなたやつかさ、みんなに白い目で見られながら、1人生きていくことになるだろう・・・。 そう考えると、絶望感に襲われた。 でも、これでもうこなたとの関わりも無くなる、私のせいでこなたを悲しませずに済む・・・。 そう考えると、その絶望感も少し和らいだ気もする。 沈黙が流れる。 今こなたはどんな顔をしているだろうか。とてもじゃないけど顔を見る勇気なんか無い。 私はただただ、歪んだ視界で床を見ていた。 「かがみ。」 どれだけの時間が経っただろう。こなたの声が聞こえたかと思うと、ふいに暖かな空気に包まれた。 思わず顔を上げると、信じられない光景・・・こなたが、私を抱きしめていた。 「こ、こ・・・なた・・・?」 「私、泣いてるかがみなんて見たくないよ。」 そう言いながら、こなたは私の頭を撫でてくる。とてもやさしくて、驚きで止まりかけていた涙が、またあふれてきて・・・。 でも・・・ 「気持ち悪いとか思わないの? 私は・・・同じ女の子を好きになってしまったのよ? アンタに恋愛感情を抱いてしまったのよ?」 「私がそんなこと思うわけないじゃん。だって―」 そこでいったん言葉を切ると、私から離れて、こなたは私をまっすぐ見つめてきた。その目はとても真剣で、何かを決意したようだった。 「私もかがみのこと・・・好き、だから。」 ・・・今、なんて? 私の聴き間違いだよね、こなたがそんな事言うはずないもの・・・。 「私ね、かがみと一緒にいると、いつもとても楽しいんだ。 私のマニアックな話にも反応してくれるし、コミケにも付いてきてくれる。 わがままな私にこんなにも優しくしてくれる人、初めてだった・・・。」 嘘、でしょ・・・? 「気付けば私はかがみばかり見てたんだ。レズとか同性愛とか、二次元の世界だけだと思ってたのにネ。」 こなたも・・・私の事・・・。 「だけど、かがみがそんなの認めてくれるはずがないと思って、この想いはずっと胸にしまっておくつもりだったんだよ。」 私と同じこと、考えて・・・。 「でも、かがみは今、勇気を出して私に想いを言ってくれた。だから、私も言うよ。」 ― 私は、かがみが好き。私と付き合ってほしいナ。― 「こなたぁ!」 気がつけば私はこなたに抱きついていた。こなたのほうが私よりだいぶ小さいはずなのに、なぜかとても大きく感じられた。 まさか、こなたが私の事を好きだったなんて・・・まだ信じられない。夢なんじゃないかって思ってしまう。 「夢じゃ・・・ないよね? 現実なんだよね?」 「私も信じられないよ。でも、きっと現実。だって、かがみの体温が伝わってくるから。」 そうだ、私にもこなたの体温が伝わってくる。これは夢じゃないんだ。 「かがみ・・・ちょ、ちょっと苦しいよ。」 こなたの体温をもっと感じたいがために、無意識のうちに腕に力が入ってしまったらしい。 「あ、ゴメン・・・」と言って抱きしめていた腕を放す。 「それでね、かがみ・・・。」 こなたが言いたいことは分かっていた。だから、できる限りの笑顔で1つしかない答えを・・・。 ― もちろんよ、こなた! これからよろしくね!!― |
というわけで、私が初めて書いた「らき☆すた」小説はこれで終了です。最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
え〜と、とりあえずかがみ視点で告白みたいのを書いてみたいなぁ・・・と思っていたらこんなのになってしまいました(orz 「らき☆すた」小説自体初めて書くのに、さらに「かがみ×こなた」にしようとハードル上げすぎました。前半「かがみ→こなた」でしたし・・・。 この小説を書いていて、かがみの「素直になれない」という気持ちが痛いほど分かりました。 私もそうなんですよ、素直になれないんです・・・。それも家族に対してですよ? 友達には素直に話せるんです。普通逆ですよね。 友達とはペラペラしゃべるのに、家では「うん」とか「分かったよ」とか、ひと言で終わってしまうんですよ。 決してしゃべりたくない訳ではないし、親が嫌いとかでも無いです。けど、なんか素直にしゃべれないんですよ・・・。 ここ数年「ありがとう」もメールでしか言った覚えがないです。たぶん恥ずかしくて直接言えないんでしょうけど、自分でもよく分からないです。 そんなわけで、かがみの素直、とは少し理由が違うかもしれませんが、かがみの気持ちはすごく分かるんですよ。 だから、小説の前半に関しては、少し暗くなってしまいましたが意外とスラスラ書けました。後半でドン詰まりって感じです・・・。 でも、1年ぶりに書いた小説としては、なかなかの出来だと思っています。 最後に、私に新しい分野の小説を書かせてくれた「らき☆すた」には本当に感謝しています! 私は、この先も「らき☆すた」を応援し続けます。 |